大人のリノベーション テーマ別考察 「長生きできる家」その1

人間には逃げられない事が2つある。「税金と死」だと言った人が居ました。
死はともかく税金とは?ちょっと税金を取る側ととられる側に向けたアイロニーに富んだ名言だと思いますが、ある意味、税金も払えないような人は人間ではないという意味も込められているのでしょうか。
健康寿命と平均寿命

健康寿命と平均寿命

日本では、最新のデータによる平均寿命が、男性が81.09歳、女性が87.26歳(2017年厚生省統計)で先進国の中では世界一の長寿国となっていますが、それらの要因としては、食事、ストレス、環境、睡眠、運動をしっかりとっていると様々あるのでしょうが、私は医療の発達、つまり医療の質や施設数や薬の投与によって無理矢理生かされているという理由が相当大きいような気がします。
私は人間の寿命が長ければ良いとは思っていませんが、それは何故かと言えば寿命には健康寿命と平均寿命があり、ただ薬によって生かされている健康寿命ではない人生ならそんなに長生きしても仕方ないと思っています。
それなら昔のように自然の成り行きとして早く死んでしまった方が良いと考える人もたくさんいるのではないでしょうか。

設計

設計

私は今まで、住宅の設計の他にホテルや事務所ビルや工場や商業施設の他、病院や老人ホームや高齢者のデイケアセンター等、人間の生と死に直結する施設も手掛けてきましたが、そんな中、昨年に特別養護老人ホームの中の「看取りの部屋」の設計施工を依頼されそれを実現した経緯があります。
その特別養護老人ホームには、看取りの部屋が3部屋ありましたが、それらの部屋はほとんど満室状態でした。
そして1日空いたかと思うと次の日には、また別の人がそこに移されているという状況がずっと続いていく事に気付かされました。
つまり特別養護老人ホームで死期の迫った人、食事が出来なくなるとか寝たきりで会話も無くなり呼びかけの反応も無くなってきて、あぁ、この人の寿命もあと数日だという人がその「看取りの部屋」に移されてくるのです。
それで私自身がもうすぐ死ぬと解った時、自分はどういう部屋で過ごしたいかという事を考えて、その設計を進めてきました。
そしてその病院の施設の責任者や担当の医師との喧々諤々の討論の末、私が終末を迎えた時に居たいと思う様な看取りの部屋を提案し実際に作ったのです。その時の私のブログでは以下のように綴っています。
「大人のリノベーション」のテーマ別考察 終末を家で暮らせる部屋

私が「大人のリノベーション」50代~70代が住みたくなる家を作ろうと思ったきっかけになった理由のひとつに、特別養護老人ホームでの看取り(みとり)の部屋の設計依頼があり、それを作ったという事もあります。
「みとりの部屋」とは、その施設に入居している誰かが余命1週間から2週間位と診断され、その人が亡くなるまでその部屋に移される部屋の事です。
人間誰しも死からは逃れられませんから仕方ありませんが、何と悲しくて切ない部屋なのでしょう。

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近年は、自分の子供や肉親だからといって人の面倒を見てくれるという可能性もどんどん減ってきています。
弊社ホームページ内ブログ『特別老人ホーム「看取り(みとり)の部屋」の設計依頼を受けて」(2018-03-03)、『モダンデザインであり続ける為に その2』(2018-07-25)、『在宅医療とは・・・それを助けられる住まいのリフォームについて』(2018-07-27)で書きましたように、人間ついに死ぬと解った時には、どんな部屋で死を迎えたいのだろうかという素朴な疑問がありました。
私はこれまでのこのブログ内でも、介護がしやすい部屋とか家族が楽しく介護も行える部屋とか様々な家と介護というテーマで私なりに色々考えてきました。

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私のこのブログも書き始めて約5年が経過して様々なテーマで書いていますが、今まで約500位のテーマについて多種多様な内容の記事を書いてきました。
大きく分けると当然の事として建築について、その他世の中の事、政治経済について、何となく気が付いた事、現代人への警鐘、日本の四季や旅行について、何の本を読み何の映画を見たか、ビジネスについて、人生訓、昭和の時代について、教育について等、様々な観点から思いつくままに書いてきました。
その中で一番多くのテーマは、自然素材で作る家とか大人のリフォーム、そして介護しやすい家とかのテーマで結果的に「人間は究極的にはどんな家に住むのが理想なのか」という事に集約されているという事に気が付きました。
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人生のあらゆる出来事は、例えばそれぞれの人の日常の1日の行動を点として、それが1ヶ月、1年という線となり結果的に面になる。そしてその面こそが、その人の人生だと私は思っていますから、1日1日をどのように生きて行くのかという事がとても大切な事だと思っています。
つまりその人の人生の結果は偶然ではなく、その人の歩いてきた道そのものが表れたものだと思っているのです。

そんな中で、私は建築家として「住まい」というものが持つ意味を様々な角度で考えてきました。
人間は自分が気付かない内にというか気付かない振りをしている内に、誰でも年老いていきます。
そして、人によってはある時、突然だが徐々に一人では生活出来なくなり、仕方なく誰かに介護してもらわなければならなくなります。
本当はそんな時、誰に介護してもらえば良いのかを、元気な内に考えておくべきなのです。
とはいっても、ほとんど人はせいぜいただその月のあるいはその年の事を漠然と考えるだけで、自分の老後の生活を具体的に考える事は中々出来ません。

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私は、建築に携わる人間として、住まいと介護という観点から様々な視点で考える機会がありました。
そして、ひとつの表現の場としてこのブログという形で様々な事を書いてきましたが、それらの積み重ねがテーマは違うように見えてもどこか1本の線で繋がっていることに気が付きました。
そしてそれらの果実のひとつとして、今回の50代~70代の人が住みたくなる「大人のリノベーション」のショールーム開設につながったのだと思います。
「終末を家で暮らせる部屋」は可能な限り病院や施設に頼らず、自宅で暮らせるようにするにはどうしたら良いかという話です。
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今は腫れ物に触るような過看護ではなく、自立支援を目指す時代と言われています。
例えば、昔は危ないから料理はさせないという考え方が主流でしたが、それでは生きる力が失われてしまいます。
周囲や家族が力み過ぎると介護鬱や介護離職という事につながり、家族全員がプレッシャーを感じ、家族全員が不幸になるというケースもあります。
そしてお互いに本音が中々言えないことで更なる本人の病状悪化につながっていくというケースが多いと思われます。
大切なのは本人のやりたい気持ちを尊重してあげること、そして家族は「愛」を、介護はある程度は「プロ」に任せるという事も大切ではないかと思うのです。何でもかんでも自分でやろうとせず、うまく分業していくことが長く続けていく上では必要ではないでしょうか。
ですから、私が目指す「終末を家で暮らせる部屋」は、親が老人介護にしろ片方だけが暮らすにしろ、年老いた本人が可能な限り自立できるよう支援する部屋の事です。

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例えば子供達が独立していって、余っている部屋の3室分をまとめて大きな部屋にして小さな家の様なスペースを作るとか、その部屋の中にトイレがあり、ミニキッチンがあり、家族が来た時に楽しく過ごせるような居間と小さな食堂もあり、本を読んだり書いたりできる造り付けの様な机もあるといった、そしてもちろん寝る為のベッドもあるという様な今まで住んでいた家をぐっと凝縮したような住まい方のできる家にリノベーションするというのも良いと思います。
つまり、自分達で可能な限り生活出来て、家族が来てくれるのが自分達も楽しいし、訪れる家族も楽しくなるという家にしたらどうでしょう。


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プロフィール

蓑田 常弘

Author:蓑田 常弘

一級建築士 蓑田常弘

株式会社ミノダ建築デザイン 代表
LIXILリフォームショップライファ立川代表
株式会社スインクハート 代表


→ 会社ホームページ

建築一筋だが、建築馬鹿ではない。

いつ仕事をしているか分らないが、しっかり納期には間に合っている。

自分の好きな建物の仕事で生計を立てられている自分はとても幸せ者だと思う。

1日おきの2kmの水泳はこれからずっと続けたいと思っている。
(楽しみというより修行のような)

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